【サンクトペテルブルク 11月16日】
本日、市内の軍法会議は作家フョードル・ドストエフスキーを含む知識人グループ「ペトラシェフスキー派」の被告らに対し、死刑判決を言い渡した。皇帝専制に批判的な文書の朗読・配布を行ったとして、国家転覆を図った罪に問われたもので、文壇・知識層に衝撃が走っている。
ドストエフスキーは、仲間とともに政治・哲学・社会改革について議論を重ね、農奴制の廃止や出版の自由を求める立場を示していた。政府はこれを危険思想とみなし、今年春に集会を一斉検挙。軍事裁判に付した。判決理由では「国家秩序に対する敵対的精神を扇動した」と断じられている。
刑は通常であれば数日以内に執行されるが、宮廷筋によれば、皇帝ニコライ一世が最終判断を下すための報告を受けているとの情報がある。市内には「特赦が出るのではないか」との噂が広がる一方、兵営周辺には憲兵が配置され、緊張が続いている。
文学界では、ドストエフスキーの才能を惜しむ声が多い。彼はすでに『貧しき人々』で高い評価を受け、若き新進作家として注目されていた。仲間のひとりは「彼の思想は国家への脅威ではなく、人間への深い理解から発している」と語った。
死刑判決という厳しい決定を前に、この事件がロシア社会に与える波紋は大きい。
— RekisyNews 国際・文化面 【1849年】
