与謝野晶子、反戦の長詩「君死にたまふことなかれ」を発表

 【東京 9月1日】

文壇で注目を集める歌人・与謝野晶子(26)が、本日発行された文芸誌『明星』において長詩「君死にたまふことなかれ」を発表し、社会に大きな衝撃を与えている。この詩は、現在激戦が続くロシアとの戦争に出征した弟・籌平(ちゅうへい)への切実な呼びかけとして書かれたもの。晶子は「弟よ、死んではならぬ」と強い言葉で命の尊さを訴え、国家や戦争への従属よりも、家族の愛と生の尊重を優先すべきだと詠い上げた。

特に注目を集めたのは、冒頭の有名な一節である。
「君死にたまふことなかれ」
この一行に込められた切実な思いは、戦場に向かう兵士やその家族の胸を強く打つとともに、政府や軍部への暗黙の批判とも受け取られている。日露の戦火が広がる中、こうした「反戦的」な表現は極めて異例で、文壇や世論に大きな波紋を呼んでいる。

支持者からは「人間らしい愛情の表現」と高く評価する声がある一方で、一部からは「戦意を削ぐ」「非国民的だ」とする強い批判も上がっている。晶子は本紙の取材に対し、「国のために命を捧げよと声高に叫ぶ時代ですが、家族を想う気持ちは誰にもあるはずです。私はただ、弟に生きて帰ってきてほしいと願うだけなのです」と語った。

この長詩の発表は、従来の「国家第一」の価値観に対し、「個人の命の尊重」という新しい視点を提示したことで、明治時代の文学界と社会思想に大きな転換点をもたらす可能性がある。晶子の言葉は、戦時下の日本社会において愛と平和の象徴として長く語り継がれるだろう。

— RekisyNews 文化面 【1904年】

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