【東京 9月1日】
第3回世界陸上競技選手権大会(東京・国立競技場)で、本日行われた男子マラソンにおいて、谷口浩美(31、旭化成)が2時間14分57秒の記録で優勝し、日本人として初の世界陸上金メダルを獲得した。快晴の東京の街並みを駆け抜けた谷口は、37キロ付近でスパートをかけると、ライバルたちを一気に引き離し、最後は両手を高々と掲げてゴールテープを切った。
レース序盤はケニア勢やエチオピア勢らアフリカ勢を中心に、世界の強豪が先頭集団を形成。谷口は中盤まで冷静にペースを維持し、30キロを過ぎたあたりから徐々に前に出る展開を見せた。37キロ地点での鋭い加速は観客を沸かせ、国立競技場に戻ってきた谷口が最初に姿を現した瞬間、スタンドは大歓声に包まれた。
ゴール後のインタビューで谷口は、「声援が本当に力になった。東京で走れて幸せです」と涙ながらに語った。約6万人の観客が詰めかけたスタンドでは、「日本」「谷口」のコールが響き渡り、沿道の市民からも熱い声援が送られた。
今回の金メダルは、日本男子マラソン界にとって歴史的快挙であると同時に、来年のバルセロナ五輪に向けた大きな弾みとなる。陸上関係者からは「世界の頂点に立ったこの結果は、日本の長距離界に大きな自信を与える」との声が相次いでいる。
今大会は日本開催という地の利もあり、観客・選手一体となった熱戦が繰り広げられているが、谷口の栄冠はその中でもひときわ輝く成果として、スポーツ史に長く刻まれることとなった。
— RekisyNews スポーツ面 【1991年】