【バイコヌール 2月19日】
ソビエト連邦は本日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、宇宙ステーション「ミール」の基幹となる中核モジュールを打ち上げた。大型のプロトンロケットが夜空を裂いて上昇し、低い地鳴りが発射場の柵を震わせた。見学所の兵は耳当てを押さえ、技術者は白い息を吐きながら計器盤の数字を追った。ミールは「平和」「世界」を意味する名とされ、複数のモジュールを継ぎ足して拡張する構想で、船体前部にはハブ状の接合部が設けられ、最大で複数の宇宙船や実験区画を受け入れられるという。接合部は計六つの連結口を備え、将来の増設を見据えた造りだとされた。
当局は、新ステーションが従来の「サリュート」型を発展させ、より長期の滞在と多目的実験に耐える体制を備えると説明する。軌道投入後は姿勢制御や生命維持装置の確認を進め、近く有人船ソユーズが接近して初の乗員が船内に入る見通しだ。管制室では、予定時刻どおりに分離信号が表示されると、追跡班が軌道の数値を読み上げ、握りこぶしを作ってうなずく者もいた。発射は協定世界時では19日夜に当たり、モスクワでは日付が変わったころと伝えられる。
米ソの宇宙開発競争が続く中、ミールが恒常的な有人活動の拠点となれば、観測・材料実験・医学研究などの成果が期待される。一方で、補給便の確保、増設モジュールの完成、長期運用に伴う安全管理は重い課題だ。発射場の外れでは、炎の反射で一瞬だけ雪面が赤く染まり、見上げた人々は言葉少なに頷き合った。計画が進めば、軌道上での滞在は短期の訪問から、継続的な生活へ移るとみられる。
— RekisyNews 科学面 【1986年】
