力道山、死去──昭和の英雄に突然の別れ

【東京 12月15日】

8日に都内のナイトクラブで暴力団員に腹部を刺され治療を受けていた プロレスラー・力道山(39)が本日未明、入院先の順天堂大学病院で死去した。 日本初の国民的レスラーとして絶大な人気を誇った人物の急逝に、病院周辺には早朝から多くのファンが集まり、沈痛な空気に包まれた。

事件は8日夜、赤坂のクラブ店内で口論の末に刃物による傷害を受けたもので、力道山は緊急手術を受け経過が注目されていた。しかし容体は一時回復したものの、腹膜炎が急速に悪化し、医師団の懸命の処置もむなしく帰らぬ人となった。 病室には夫人をはじめ関係者が立ち会い、涙の看取りとなったという。

力道山は大相撲力士から転身し、テレビ黎明期の日本でプロレスブームを巻き起こした立役者だった。外国人レスラーを相手にした勇敢な戦いぶりは、戦後復興期の国民に「勇気」と「興奮」を与え、街頭テレビに大勢が集まる社会現象を生み出した。その功績から、政財界や文化人にも幅広い支持者を持っていた。

訃報を受け、日本プロレス協会は「日本のプロレス界にとって計り知れない損失」と声明を発表。ファンからは「まだ若いのに」「信じられない」と動揺の声が広がる。昭和の象徴的存在の突然の死は、年の瀬の日本に深い衝撃を与えている。

— RekisyNews 社会面 【1963年】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次