モハメド・アリ、静かなる“最後のゴング”──バービック戦で敗北 栄光のキャリア、事実上の最終章へ

【ナッソー 12月11日】

本日、カリブ海バハマ諸島のナッソーで行われたヘビー級10回戦で、元世界ヘビー級王者 モハメド・アリ(39)トレバー・バービック と対戦し、判定で敗れた。公式には引退を表明していないものの、関係者の間では「これが事実上のラストファイト」とみなされており、長年リングを彩ってきた偉大なチャンピオンの時代が終わりに近づいたことを印象づける一戦となった。

試合は序盤こそアリが得意のジャブとステップで距離を取ろうとしたものの、全盛期のような軽やかさは影を潜め、次第に被弾が目立つ展開となった。バービックはプレッシャーをかけ続け、試合終了のゴングが鳴ったとき、判定は 3–0でバービック。観客席からはアリへの惜しみない拍手が送られた。

試合後、アリは大きな声での宣言こそ避けたものの、控え室で記者団に対し、「もう若いころの自分ではない。家族とゆっくり過ごしたい」と語り、これ以上のリング復帰に消極的な姿勢をにじませた。

アリは1960年ローマ五輪金メダルを皮切りに、プロで世界ヘビー級王座を3度獲得した史上初のボクサーであり、“蝶のように舞い、蜂のように刺す”スタイルで世界中のファンを魅了してきた。とりわけ ジョー・フレージャージョージ・フォアマン との激闘は今なお語り継がれ、スポーツの枠を超えた“伝説”として位置づけられている。

ここ数年は年齢とダメージの蓄積により動きの衰えが指摘され、昨年のラリー・ホームズ戦では厳しい一方的展開に終わった。今日の試合は、その延長線上にある、いわば「最後の確認」のような意味合いを持っていたともいえる。

会場のファンの中には涙ぐむ者も多く、「結果は負けでも、彼は永遠のチャンピオンだ」と語る声が相次いだ。プロモーターや関係者も、今後アリが正式に引退を表明するのは時間の問題だとの見方を示している。

本日の敗戦は、公式な宣言こそないものの、モハメド・アリがリングを去ることを世界に強く印象づけた一夜となった。

— RekisyNews スポーツ面 【1981年】

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