【東京・赤坂 12月8日】
本日深夜、東京・赤坂のナイトクラブにおいて、国民的人気を誇るプロレスラー 力道山(39) が暴力団関係者とみられる男に刃物で刺され、重傷を負った。事件は突然の衝突から起きたもので、現場は一時騒然となり、関係者や市民の間に大きな衝撃が走っている。
事件が起きたのは赤坂見附近くのナイトクラブ。目撃者によれば、店内で口論が発生し、相手の男が突然刃物を取り出して力道山の腹部を刺したという。店の従業員は「最初は小さな言い争いのように見えたが、まさか刃物が出るとは思わなかった」と語り、居合わせた客のひとりは「力道山さんが倒れ、店内は叫び声で混乱した」と振り返った。
力道山はすぐに都内の病院へ搬送され、緊急手術が行われた。医師団は「傷は深く、感染症の危険もある」として厳重な管理下で治療を続けており、容体は依然として予断を許さない状態だという。
戦後の混乱期において日本中に勇気を与えた力道山は、テレビ中継によるプロレスの大人気と相まって“国民的英雄”として知られているだけに、今回の事件は社会全体に大きな動揺を広げている。病院前には深夜にもかかわらずファンが集まり、「なんとか助かってほしい」「日本の力が失われてしまう」と祈り続けた。
警視庁は、現場から逃走した容疑者の身元をほぼ把握しており、動機や背景について組織的な関係の有無を含め慎重に捜査を進めている。ある捜査関係者は「偶発的な口論が発端とみられるが、今後の事情聴取で詳細を明らかにしたい」と述べた。
今回の襲撃事件は、日本スポーツ界を象徴する存在が不意の暴力に倒れた痛ましい出来事であり、国民の間には深い悲しみと不安が広がっている。
医師団は今後1週間が峠とみて懸命の治療を続けている。
— RekisyNews 社会面 【1963年】
