【モスクワ 10月20日】
本日夜、ソビエト連邦モスクワのルジニキ・スタジアムで発生した群衆事故により、多数の観客が将棋倒しとなり、340人を超える死者が出た模様だ。事態を受け、当局は現場周辺を封鎖し、事故の詳細な調査に着手している。
事故は、UEFAカップの試合「スパルタク・モスクワ対ハールレム(オランダ)」の試合終了直前、観客の一斉退場時に発生。冷たい雨の降る中、一部の観客が先に出口へ殺到したことをきっかけに、狭い通路で転倒が相次ぎ、大勢が折り重なるように倒れたとみられている。
ソビエト国営放送によると、事故直後から救急隊と警備当局が懸命な救助活動を行ったが、通路の混乱が激しく、多くの負傷者が身動きの取れない状態に。病院関係者によれば、「踏圧による窒息や骨折が多く見られた」とのこと。
現地の目撃者は「悲鳴が響き、出口は地獄のような状態だった」と語り、群衆誘導の不備や警備体制の脆弱さを指摘する声も上がっている。
当局は公式な死者数の発表を控えているが、非公式筋では死者は340人以上、負傷者も数百人にのぼると伝えられている。ソビエト内外からは、群集管理や安全対策の不備を批判する声が高まりつつあり、スポーツ界全体に衝撃が広がっている。
ルジニキ競技場は1956年に開設され、モスクワ五輪でもメイン会場として使用された歴史的施設。その名に深い傷を残す今回の惨事に、国民の悲しみと怒りが交錯している。
— RekisyNews 国際面 【1982年】
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