【東京・戸塚球場 10月16日】
本日、東京の戸塚球場において、早稲田大学と慶應義塾大学による壮行野球試合「学徒出陣壮行早慶戦」が挙行された。太平洋戦争の戦局が緊迫する中、学徒動員により多くの学生が翌週にも出征することとなる中、最後の晴れ舞台として行われたものである。
早慶両校の学生たちは、学問半ばにして銃を取る決意を胸に、全身全霊を込めて白球を追った。スタンドには学友や教職員、家族、一般市民ら約2万人が詰めかけ、涙と声援の中で試合を見守った。
試合は白熱し、互いに一歩も譲らぬ攻防が続いたが、最終回に慶應が勝ち越しを決め、3対2で勝利を収めた。しかし、勝敗以上に、青春のすべてを賭けた球児たちの姿に、多くの観客が深い感動と哀惜の思いを抱いた。
試合後、整列した選手たちは、帽子を取り一礼しながらスタンドに別れを告げた。場内には「さらば、我が青春」と書かれた横断幕が掲げられ、すすり泣く声があちこちから聞こえた。
この壮行試合は、明治以来続いた学生野球の歴史に一つの幕を引くものともなり、戦時下における「最後の早慶戦」として、長く記憶に刻まれるであろう。
— RekisyNews スポーツ面 【1943年】