日本初の山岳会、東京にて発足──小島烏水らが結成、欧州登山文化の導入目指す

【東京 10月14日】

本日、我が国初となる本格的な山岳団体「山岳会」が東京にて正式に発足した。結成を主導したのは、登山愛好家として知られる小島烏水(こじま・うすい)氏をはじめとする有志で、欧州アルプスの登山文化に影響を受けた新たな試みとして注目されている。

山岳会の設立趣旨は、「山を愛し、山に親しみ、山を学ぶ」ことを目的とし、単なる登山の技術習得にとどまらず、山岳地帯の地理・地質・植物・文化の研究も視野に入れて活動する方針だという。創設メンバーには烏水氏のほか、学者、実業家、新聞記者など、知識階級を中心とした十数名が名を連ねている。

発会式は本日午後、神田の学士会館にて執り行われ、参加者らは日本各地の山岳探訪を通じた文化的向上と交流の意義を熱く語り合った。挨拶に立った小島氏は、「わが国には富士をはじめ、信濃、飛騨、出羽など、比類なき山々が連なる。これらの自然の驚異と向き合い、登る者こそが真の文明を知る」と語った。

この山岳会は、英国のアルパイン・クラブ(1857年創設)などに倣った構想で、会誌の発行や山岳図書の収集、遠征記録の蓄積なども計画されている。登山という行為がまだ一部の冒険者や修験者に限られていた時代において、近代的な市民による登山文化の萌芽といえよう。

近年、富士山をはじめとする名山への登山者が増えるなか、安全登山の普及や知識の共有も求められており、山岳会の活動が新たな指標となることが期待される。

今後、同会は来春にも第一回の公式登山を企画しており、信州方面への遠征が有力視されている。

— RekisyNews 文化面 【1905年】

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