モンツァ・サーキットで大惨事 — トリップス選手事故死、観客14名も巻き込まれる

【モンツァ 9月10日】

北イタリア・モンツァで開催されたフォーミュラ1世界選手権第7戦「イタリアグランプリ」にて、本日衝撃的な大事故が発生した。ドイツのヴォルフガング・フォン・トリップス選手(33歳/フェラーリ)がレース中に他車と接触し、観客席へと突っ込む形でマシンが大破。トリップス選手は即死、さらに14名の観客が命を落とすという前代未聞の惨事となった。

事故が起きたのは、スタートから数周目、時速200km近いスピードで走行中のトリップス車と、ロータスの若手ジム・クラーク選手(スコットランド)との間で接触が発生。フェラーリは宙を舞い、右側スタンドのフェンスを越えて観客を巻き込みながら激突した。現場には悲鳴が響き渡り、救急車と消防車が次々と駆けつけたが、すでに多くの命が失われていた。

イタリア当局によれば、負傷者も多数にのぼり、病院では重体の観客が複数いる模様で、死者数は今後さらに増える可能性があるという。

フォン・トリップス選手は、今季チャンピオン争いで首位を走る注目選手であり、この日の勝利でタイトル確定の可能性もあっただけに、関係者のショックは大きい。フェラーリ・チームのエンツォ・フェラーリ代表も深い悲しみに沈み、「モータースポーツの栄光と危険が同居する瞬間を、我々は忘れてはならない」と述べた。

なお、レースはそのまま続行され、アメリカのフィル・ヒル選手(フェラーリ)が1位でチェッカーを受けた。これにより、ヒル選手の世界王者獲得が事実上確定したが、祝福の空気はなく、レース終了後の表彰台でも沈痛な面持ちが広がった。

モンツァ・サーキットの安全対策に対する批判も強まっており、今後のF1レースの運営体制に波紋を広げそうだ。

— RekisyNews スポーツ面 【1961年】

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