戦時下の中等野球、甲子園で開幕 文部省主催の全国大会

 【甲子園球場 8月23日】

本日、文部省主催による全国中等学校野球大会が甲子園球場で開幕した。地方予選を勝ち抜いた代表校が整列し、正面掲揚台の前で質素な開会式が挙行。選手団は規律正しい行進で入場し、選手宣誓では「鍛錬と協同をもって国家に資す」との言葉が力強く響いた。

大会は戦時下の開催とあって、式典は簡略化され、応援の鳴り物や派手な装飾は見送られた。球場では節電と物資節約の徹底が呼びかけられ、用具の手入れや球の再使用にも注意が払われている。観客席の入場は間隔を空け、係員が静かな拍手での声援を促した。

初日の試合は緊張感の中で始まり、各校の投手は低めを丁寧に突き、守備陣は連携の速さで魅せた。長打こそ少ないが、送りバントや進塁打を確実に重ねる堅実な攻めが目立ち、ベンチワークの巧拙が勝敗を分ける展開となった。スタンドには家族連れの姿もあり、拍手が白球の行方に合わせて大きくなったり小さくなったりと波を描く。

主催者は「健全な心身の鍛錬と連帯の涵養」を掲げ、試合外の生活指導や清掃・整列まで含めた“教育の場”としての運営を強調する。一方で、選手の体調管理と暑熱対策、輸送の確保が課題で、予備日の設定や試合時間の前倒しなど柔軟な対応も準備された。

白球を追う若者たちの背に、時代の影は濃い。だからこそ、整然としたプレーと握手に託される意味は大きい。夏の聖地はきょう、静かな熱を帯びた。大会は明日以降も日程を進め、代表校の頂点を目指す戦いが続く。

— RekisyNews スポーツ面 【1942年】

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