松坂、決勝でノーヒットノーラン 横浜が春夏連覇を達成

【甲子園球場 8月20日】

全国高等学校野球選手権の決勝で、横浜のエース松坂大輔が相手打線を無安打に抑えて完封した。直球は終盤も伸びを失わず、外角へのスライダーと内角速球の配分が冴え、球場のざわめきは回を追うごとに歓声へ変わった。走者を背負った場面でも内野の堅守と捕手の配球が光り、スコアボードには零が並ぶ。序盤の球審のゾーンにも柔軟に順応し、四球を最小限に抑えた。

攻撃陣は機動力で相手守備を揺さぶり、犠打と進塁打で作った得点を守り切る。監督は「徹底した走塁と守備練習が実を結んだ」と語り、主将は「最後の一球まで集中を切らさなかった」と胸を張った。相手校も粘りの継投で最少失点にとどめたが、打線は決め球に封じられた。

最終回二死、スタンドが総立ちになるなか、外角高めの直球で空を切らせて試合終了。青い旗とメガホンが揺れ、校歌の合唱が甲子園の屋根に響いた。決勝での無安打試合はまれであり、個人の快投がチームの連係と噛み合って歴史的瞬間を生んだ。閉会式では賞状と深い一礼、汗の跡が帽子に滲む。

春夏の連覇は容易でない。連戦による疲労、重圧、相手の徹底した研究を乗り越えた強さは、守備位置の一歩目と走塁の半歩に宿る。球場を去る観客の一人は「球が見えず音だけが届いた」と息を呑み、少年は「いつか同じグラウンドに立ちたい」と握り拳を作った。今夏の熱気は、白球の軌跡とともに記憶に残る。打球音、歓声、太鼓のリズムが、夕暮れの甲子園に長く反響した。

— RekisyNews スポーツ面 【1998年】

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