【ニューヨーク 8月12日】
米大リーグ選手会は本日、サラリー上限(サラリーキャップ)制度の導入をめぐる経営側との交渉が決裂したことを受け、全選手の無期限ストライキに突入した。シーズン中のストは1972年以来で、162試合制のレギュラーシーズンが途中で中断される事態となった。
経営側は球団間の戦力均衡と経営安定を理由に、総年俸の上限設定を主張。これに対し選手会は「自由契約制度の骨抜き」として強く反発し、年俸抑制につながる施策の撤回を求めていた。数か月にわたる協議でも歩み寄りは見られず、選手会は予告通り本日から試合をボイコットした。
午前中にニューヨークで行われた会見で、選手会会長のドン・フェア氏は「我々は自由市場と契約の権利を守るために立ち上がった」と述べ、全選手への結束を呼びかけた。一方、コミッショナー代行のバド・セリグ氏は「今季のポストシーズン開催は不透明になった」と語り、事態の長期化を懸念している。
各球場では試合中止の告知が掲示され、ファンが落胆の表情を見せた。ニューヨークのヤンキースタジアム前では、「野球を返せ」と書かれたプラカードを掲げる市民の姿も見られた。テレビ局やスポンサーも放映権・広告契約の調整に追われ、経済的損失は数億ドル規模に及ぶとの試算も出ている。
労使双方は交渉継続の意向を示しているが、条件面の隔たりは依然大きい。シーズンの再開時期が定まらなければ、ワールドシリーズの中止という前例のない結末も現実味を帯びてくる。
— RekisyNews スポーツ面 【1994年】