【東京 12月19日】
本日、東京・代々木錬兵場において、徳川好敏工兵大尉と日野熊蔵陸軍歩兵大尉が相次いで動力飛行に成功し、日本における初の本格的飛行記録が打ち立てられた。軍の主催による公開試験の場で実施され、見守った関係者や見物人から大きな喝采が上がった。
徳川大尉は、フランス製のアンリ・ファルマン式飛行機を操縦し、安定した上昇と滑らかな飛行を披露した。続いて日野大尉も、ドイツ製のハンス・グラーデ式飛行機で飛び立ち、短時間ながら明確な離陸と飛行を達成した。両者の成功により、動力を備えた飛行機が日本の空を飛ぶことが実証された。
今回の飛行は、陸軍が近代兵器としての航空機の可能性を検証する目的で行われたもので、欧米で急速に進む航空技術の導入を急ぐ姿勢がうかがえる。会場では、機体構造や操縦技術に関する詳細な観測が行われ、今後の研究と国産機開発への応用が期待されている。
この日の成功は、交通や軍事のみならず、科学技術全般に新たな展望を開く出来事として受け止められている。空を実用の場とする時代の到来を告げる一歩として、日本の近代化の歩みに刻まれることになりそうだ。
— RekisyNews 科学・技術面 【1910年】
