【伊勢国・三瀬 12月15日】
伊勢国で長年勢力を保ってきた 北畠氏の重鎮・北畠具教およびその一族が、織田信長の嫡男・信雄の一行によって急襲され、相次いで殺害された。 事件は三瀬館での饗応の最中に起こったもので、周辺では衝撃と動揺が広がっている。
関係者によれば、信雄は伊勢国司家を継ぐため北畠家の慣例として具教らから「元服の受礼」を受ける名目で三瀬を訪れていた。しかし饗応の席上で突如家臣らが刀を抜き、具教および一門衆、側近らを一斉に討ち取ったという。「儀礼の場での急襲で、抵抗する間もなかった」との声も城下から聞かれる。
背後には、信長が伊勢支配を確固たるものとするため、旧勢力である北畠家を完全に取り込む狙いがあったとの見方が強い。具教は武勇と教養を兼ね備えた名将として知られ、かつては信長と対立したこともあった。その存在が織田方にとって潜在的な不安材料と見なされていた可能性は否定できない。
今回の急襲により、北畠氏は事実上滅亡し、信雄が伊勢統治を引き継ぐ体制が整う形となった。三瀬周辺ではなお緊張が続いており、「信長の天下取りがまた一歩進んだ」と語る者もいれば、「あまりに非情な策だ」と嘆く声もある。
歴史の転換点ともいえる今回の事件が、今後の伊勢国と織田政権にどのような影響を及ぼすのか注目される。
— RekisyNews 歴史面 【1576年】
