【ヒューストン/月面タウルス・リットロウ渓谷 12月11日】
本日、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、有人月探査計画「アポロ計画」の最終任務となる アポロ17号 が、月面の タウルス・リットロウ渓谷 への着陸に成功したと発表した。1969年のアポロ11号以来続いてきた月面着陸の歴史は、この任務をもって節目を迎えることになる。
宇宙船はアポロ司令船「アメリカ号」と月着陸船「チャレンジャー号」に分離し、指揮官 ユージン・サーナン と地質学者で月着陸初の科学者宇宙飛行士となる ハリソン・シュミット の2名が着陸船に搭乗。日本時間本日午後、タウルス山脈とリットロウ谷に挟まれた地形に静かに降り立った。ヒューストン管制室では、着陸確認の瞬間に大きな歓声が上がった。
今回の着陸地点は、月の地質学的特徴が多様に混じり合う“複合地域”とされ、過去のアポロ計画で最も科学的成果が期待されている。NASAの科学者は、「月の形成史の手掛かりとなる岩石が採取できる可能性が高い」と述べ、地質学者であるシュミットの参加によって月探査の質が大きく高まるとの見方を示した。
着陸後、サーナンとシュミットは船外活動の準備を進めており、今後3回の月面歩行で大規模な採取・測量作業を行う予定だ。月面車(ローバー)も使用され、移動範囲はこれまでで最も広くなる見通しである。
一方、司令船にはロナルド・エバンスが残り、月周回軌道で観測と写真撮影を続けている。エバンスは地表調査を補完する重要なデータを地球へ送り続けており、地上の研究チームと連携した総合探査が進められている。
アポロ計画は国家予算や国際情勢の変化を背景に本任務をもって終了するが、NASA関係者は、「人類の月探査はここで途切れるのではなく、必ず次の世代につながる」と語り、未来の宇宙開発への意欲をにじませた。
アポロ17号の着陸成功は、月探査の第一時代の締めくくりであると同時に、人類が宇宙へ歩み続ける決意を象徴する出来事となった。
— RekisyNews 科学面 【1972年】
