府中で白昼の三億円強奪──白バイ警察官を装った犯人が現金輸送車を欺く 大胆不敵な犯行に全国が騒然

【東京・府中市 12月10日】

本日午前、東京都府中市の東芝府中工場へ向かっていた現金輸送車が、白バイ警察官を装った男 によって停止させられ、積載されていた 現金約三億円 がまるごと奪われるという、前例のない大規模強奪事件が発生した。白昼の犯行であったことに加え、犯人が巧妙な偽装を用いたことから、警視庁は「極めて計画的な犯行」とみて緊急捜査本部を設置した。

事件が起きたのは午前8時過ぎ。東芝従業員の賞与支給のために運搬されていた現金を積む車両が、府中刑務所北側の路上で白バイ警察官風の男に呼び止められた。男は「お前の車の下にダイナマイトが仕掛けられている」と告げ、運転手と同乗者に車両から離れるよう指示したという。作業のふりをして車体下にもぐり込んだ男は、突然車を乗り逃げし、そのまま現金ごと姿を消した。

現場では、爆破を偽装するための煙筒や発炎装置などが見つかり、犯人が入念な準備を行っていたことがうかがえる。近くの住民は、「本物の警官だと思った。まさか強奪事件だとは気づかなかった」と語り、犯人の巧妙な偽装に驚きを隠さない。

警視庁は逃走に使われた車両を市内で発見したが、車内に残されていたのは偽の白バイヘルメットやナンバープレートなどで、犯人につながる有力な手がかりには至っていない。捜査関係者は、「単独犯の可能性もあるが、逃走経路の確保や偽装道具の準備を考えれば組織的犯行の線も排除できない」と述べ、広域的な捜査に乗り出す構えを見せている。

三億円という被害額は国内犯罪として前例がなく、府中市はもちろん、東京全域に強い衝撃が広がっている。年末の繁忙期でもあり、企業や金融機関に対して警察は厳重な警戒を呼びかけた。

白昼堂々、警官を偽装し、無抵抗のまま巨額の現金を奪い去るという大胆な犯行は、今後の防犯体制にも大きな課題を投げかけている。

— RekisyNews 社会面 【1968年】

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