ルター、教皇の破門警告書を焼却──宗教改革の対立が決定的段階へ

【ヴィッテンベルク 12月10日】

本日午後、神学者 マルティン・ルター が、教皇レオ10世より「自説を撤回しなければ破門する」とする警告勅書(教書 Exsurge Domine)を、公衆の面前で焼却するという前例のない行動に踏み切った。これにより、ローマ教会とルターとの対立はついに決裂の段階へと突入した。

焼却が行われたのはヴィッテンベルク大学近くの門前広場で、神学生や市民ら数百人が集まる中、ルターは神学著作や教会法学の書籍とともに、教皇が送付した警告文書を火中に投じた。ルターは群衆に向け、「ローマは真理を縛る権威を持たない。私の良心は神の言葉にのみ従う」と述べ、その行動の神学的正当性を訴えた。

教皇レオ10世は数か月前、免罪符販売をめぐって噴出した論争を鎮めるべく、ルターに対し「教義を撤回せよ」と警告していた。しかしルターはこれに応じず、逆に教皇制度そのものへの批判を強めていた。大学関係者の一人は、「今日の儀式は単なる挑発ではなく、ローマの権威を神学的に否定する公的宣言だ」と語り、事態の重大さを指摘する。

一方、帝国内ではルターの思想に共感する者も増えており、農民や都市住民の間でも「聖書へ立ち返れ」という主張が支持を広げている。今日の焼却を目撃した市民の一人は、「彼は恐れずに言うべき事を言った。これが新しい時代の始まりかもしれない」と興奮気味に語った。

しかし、教皇庁は今回の行為を深刻な反抗行為として受け止めており、関係者の間では、正式な破門が不可避との見方が強まっている。神聖ローマ皇帝カール5世がどのような対応を取るかも注目され、帝国議会での争点となることは確実だ。

政治・宗教の両面で激しい揺れが広がる中、ルターの大胆な行動は、今後のヨーロッパ宗教秩序を大きく変える転機となる可能性がある。

— RekisyNews 歴史面 【1520年】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次