【ローマ 12月8日】
本日、ローマ教皇 ピウス9世 は、サン・ピエトロ大聖堂において回勅 『Ineffabilis Deus(インエファビリス・デウス)』 を公布し、聖母マリアが受胎の瞬間から原罪を免れていたとする「無原罪の御宿り(Immaculata Conceptio)」を、正式なカトリック教会の信仰箇条(ドグマ)として宣言した。
世界中の司教・神学者が集う荘厳な式典で読み上げられたこの宣言は、教会史上きわめて重要かつ象徴的な出来事であり、ローマでは早朝から多くの信徒が広場を埋め尽くした。
今回の教義化は、長年議論されてきた教理問題に終止符を打つものである。中世から続く信仰と神学的解釈は地域ごとに差があり、明確な教義として定めるべきかどうかをめぐって教会内でも議論が続けられてきた。しかし、近年、信徒の崇敬が高まる中で、教皇は世界の司教から意見を集め、慎重な審議を経た上での判断に至った。
今日の式典では、ピウス9世が玉座から立ち上がり、厳粛な声で教義の文言を読み上げると、参列者からは深い沈黙ののち祈りの声が広がった。式典に参加した神学者の一人は「教会にとって新しい光が差し込んだ瞬間だった」と語り、信徒の女性は涙を浮かべながら「マリア様の清さが公式に認められた。歴史の証人になれた気がする」と喜びを語った。
一方で、教義の確立が神学的議論にどのような影響を及ぼすのか不安視する声もあり、ある司祭は「崇敬は広がるだろうが、信仰理解が複雑になる可能性もある」と指摘した。しかし、教皇庁は「信徒の信仰に根ざした自然な帰結であり、教会全体の一致を深めるもの」と強調している。
本日の宣言は、カトリック教会が信徒の敬虔な信仰と神学的伝統を統合し、新しい時代の教会像を形づくる歴史的な一歩となった。
— RekisyNews 宗教面 【1854年】
