【東京・世田谷 12月7日】
昨年の夏から消息を絶っていた作家 鹿地亘（かじ・わたる） が、本日未明、突然自宅に戻り、家族や関係者を驚かせた。さらに鹿地は、失踪中の経緯について 「アメリカの諜報機関『キャノン機関』に拉致され、監禁されていた」 と証言し、政界・公安当局・文化人社会に大きな衝撃が走っている。
鹿地は1951年11月ごろから行方が分からなくなり、家族は事件性もあるとして警察に捜索を依頼していた。しかし、手がかりは一切つかめず、一部では国外逃亡説や自発的潜伏説も流れていた。
帰宅した鹿地はやつれた表情で、「羽田付近で車に押し込まれ、そのまま連行された」と語り、監禁先では思想・活動歴について厳しい尋問を受けたと証言している。
鹿地は戦前より左翼文学に関わり、戦後は平和運動や社会運動にも参加していた人物で、当局から「危険視」される存在でもあった。今回の告白は、冷戦構造が影を落とす中で、米軍関係者による政治的拉致があったのではないかという疑念を呼び、野党議員からは「主権侵害の重大事件であり、政府は真相究明を行うべきだ」との声が上がっている。
一方、在日米軍関係者は「キャノン機関なる組織の存在を知らない」と否定しており、政府関係者の中にも「本人の健康状態や記憶の混乱を慎重に判断すべき」とする声がある。事件の真偽については、政治的背景も絡めて今後大きな議論になる見通しだ。
近隣住民は「突然帰ってきて驚いた」「本当にそんなことがあったのか」と動揺を隠せず、文化人仲間からは「鹿地氏の言うことが事実なら、日本の民主主義の根幹を揺るがす問題だ」との声も聞かれた。
今回の“鹿地事件”は、日本が冷戦の渦中に置かれた時代背景を象徴するものであり、国家安全、米軍との関係、思想弾圧をめぐる議論が一気に高まる可能性が大きい。
— RekisyNews 社会面 【1952年】
