米国初の人工衛星打ち上げ、発射台で爆発──“ヴァンガードTV3”計画に痛手

【フロリダ州ケープカナベラル 12月6日】

本日、アメリカ初の人工衛星を目指した 「ヴァンガードTV3」 の打ち上げがケープカナベラル空軍基地で行われたが、ロケットは離昇直後に推力を失い、発射台上で爆発・炎上 した。世界の注目が集まる中での失敗に、関係者の間には深い衝撃と失望が広がっている。

ヴァンガード計画は、国際地球観測年に合わせ、アメリカが独自の人工衛星を宇宙へ送り込む国家的事業として進められてきた。午前、整備を終えた三段式ロケットが発射台に据え付けられ、沿岸部には報道陣や技術者が詰めかけ、緊張の面持ちでカウントダウンを見守った。

午後の定刻、ヴァンガードTV3は白煙と炎を噴き上げて上昇を開始したが、わずか数十センチ浮かび上がった直後に突然推力を失い、機体はその場に崩れ落ちた。

直後、燃料が引火し大きな爆発が発生。発射台周辺には破片が飛び散り、空には黒煙の柱が立ち上った。技術スタッフが消火にあたる間、司令室は騒然とした空気に包まれた。

現地の技術者は「原因はまだわからない。燃料系統か、第一段エンジンの異常の可能性もある」と語り、海軍研究所の広報担当者は「重大な失敗だが、計画は継続する」と冷静さを保とうとした。

一方、観測に訪れていた市民からは「本当に爆発したのか」「ソ連に後れを取ってしまうのでは」と不安の声が上がった。

アメリカは先月、ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を成功させたことにショックを受け、宇宙開発の巻き返しに全力をあげていた。今回の失敗で、その焦りがさらに強まることは避けられない。

科学界の関係者は「失敗は痛手だが、データの蓄積は前進につながる」と強調する。次の試みは早ければ数か月以内に予定されているが、国際的な宇宙競争が激化する中、アメリカの技術力が試される局面となった。

今日の爆発は、米国宇宙開発の出鼻をくじく象徴的な出来事となったが、関係者は再挑戦を誓っている。

— RekisyNews 科学面 【1957年】

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