【東京 12月6日】
本日、東京にて雑誌 『労農』 が創刊された。階級闘争と農民問題を重視する新たな思想潮流 「労農派」 の誕生を告げるもので、知識人の間や社会運動の現場で大きな注目を集めている。
創刊号には、当時の社会科学研究や農村調査に携わる若手研究者、評論家らが多数寄稿。急速に進む都市化と産業化の陰で取り残される農村問題、労働者保護の不備、貧困の構造などが鋭く取り上げられ、“学問を現実の社会問題に接続させる” という姿勢が誌面全体に貫かれている。
編集部は創刊の辞で「農村と労働者の実情を科学的に捉え、社会の矛盾を直視する議論の場を提供する」と強調。政治的スローガンではなく、実証的な研究や現場報告を中心に据える方針を示し、既存の急進的社会運動とも一線を画す姿勢を明らかにした。
創刊号を手にした大学生の一人は「農村の貧困については噂でしか知らなかった。事実を突きつけられた気がする」と語り、労働組合の活動家は「現場で感じていた矛盾が言語化されている」と評価した。一方で保守的な評論家は「階級を前面に出す議論は社会不安を煽る」と警戒感を示し、反応は賛否が分かれている。
出版関係者によれば、創刊号の初版は予想を上回る売れ行きで、特に学生や若い研究者の間で反響が大きいという。書店では「社会問題に新しい視点が持ち込まれた」と好意的な声が聞かれる。
『労農』の創刊は、学術と社会運動の境界に新たな潮流を生み出す可能性を秘めており、労農派の形成は今後の思想界に少なからぬ影響を及ぼすとみられる。
昭和初期の社会不安が深まる中、同誌がどのように議論を導いていくのか注目される。
— RekisyNews 社会面 【1927年】
