【ベルリン 12月4日】
本日、細菌学者 北里柴三郎博士 と エミール・フォン・ベーリング博士 が、ジフテリアおよび破傷風に対する 血清療法の研究成果を正式に発表し、医学界に大きな衝撃と期待が広がっている。これまで有効な治療法がほとんど存在しなかったこれらの感染症に対し、回復へ導く実験結果が得られたとして、欧州の医学者たちは「医学史を塗り替える発見」と高く評価している。
今回の研究は、北里博士がベルリンのロベルト・コッホ研究室で進めてきた破傷風菌の研究を基礎とするものだ。両博士は、感染に抵抗する“抗毒素”が血液中に存在することを突き止め、この抗毒素を動物の血清から抽出し他の個体へ投与することで、症状を抑える効果があることを明らかにした。発表を聞いた医師のひとりは「細菌による致死的な病を初めて直接制御できる可能性が開けた」と興奮気味に語った。
発表会場にはドイツ国内外の研究者や医学生が詰めかけ、スライドと実験記録が示されると、聴衆は食い入るように見入った。実験動物では血清投与によって毒素による痙攣や呼吸不全が抑制され、致死率が大きく減少したという。北里博士は「毒そのものを退ける力が体内に生まれる」と説明し、会場からは驚きと拍手が起こった。
ジフテリアは幼児を中心に高い致死率を示す恐ろしい病であり、近年は欧州各地で流行していた。一方、破傷風は戦場や農村で負傷者が感染しやすく、“死の病”として恐れられてきた。今回の発見により、各国の医師たちは「救える命が急速に増える可能性がある」と期待を寄せている。
医学雑誌各誌は特集号の準備を進めており、各国の研究施設では応用研究に向けた計画が動き始めた。現地の医学生は「自分たちの目の前で医学の未来が開けた気がする」と語り、研究室の前には血清療法を学ぼうとする若者の姿が多く見られる。
本日の発表は、感染症治療の概念を大きく変える歴史的瞬間となった。 血清療法の普及が進めば、ジフテリアと破傷風による犠牲は大幅に減少するとみられ、世界の医学界に新たな希望が灯った。
— RekisyNews 科学面 【1890年】
