【バイコヌール(カザフ共和国) 12月2日】
本日午後、ソ連の宇宙基地バイコヌール宇宙基地より、有人宇宙船ソユーズTM-11号が打ち上げられ、乗組員の一人として搭乗したTBS記者・秋山豊寛(あきやま・とよひろ)氏が宇宙へ向かった。日本人として初めての宇宙飛行であり、同時に世界で初めて宇宙へ旅立つジャーナリストとして歴史に刻まれる瞬間となった。
打ち上げは現地時間午後4時頃、轟音とともに白煙を上げて開始された。秋山氏を含む3名の乗組員を載せたロケットは夜空を力強く昇り、周囲では関係者や取材陣から歓声が上がった。地上から見守ったTBSスタッフの一人は「ついにこの日が来た。胸が熱くなる」と目を潤ませた。
秋山氏は長年科学技術分野の取材に携わり、今回の宇宙飛行は日ソ共同企画「宇宙特派員計画」の一環として実現したもの。訓練は約1年前からモスクワ郊外の“星の街(スターシティ)”で行われ、無重量状態での作業、ロシア語でのコミュニケーション、緊急時対応など厳しいプログラムをこなしてきた。関係者は「彼は記者である前に、一流の訓練生だった」と高く評価する。
ソユーズTM-11号は順調に軌道へ投入され、数日のうちに宇宙ステーション・ミールとドッキングする予定。秋山氏は滞在中、宇宙からの生中継レポートや科学実験の報告を行い、地上の視聴者へ“宇宙からの声”を直接届ける計画だ。テレビ局関係者は「世界中で前例がない“宇宙記者”としての取材になる」と語り、放送準備に追われている。
市民の間では早くも期待が高まっており、東京の街頭ビジョンでは打ち上げの様子が映し出され、人々が足を止めて空を見上げた。会社員の男性は「日本人が宇宙へ行く時代になるとは」と驚きを隠さず、学生の一人は「宇宙がぐっと身近になった気がする」と興奮気味に語った。
今回の飛行は、日本の宇宙開発にとって象徴的な節目であるだけでなく、ジャーナリズムのあり方にも新境地を開く出来事となった。秋山氏は宇宙で何を見て、何を伝えるのか。その報告に国内外の注目が集まっている。
— RekisyNews 科学面 【1990年】
