周口店で人類史を揺るがす大発見──裴文中氏、頭蓋骨を発掘 “北京原人”の実在を裏付け

【北平(ペイピン)郊外・周口店 12月2日】

本日、北平の西南に位置する周口店の石灰岩洞窟において、中国の考古学者・地質学者 裴文中(ペイ・ウェンチョン)氏 が、旧石器時代のものとみられる完全に近い頭蓋骨化石を発見した。周口店遺跡ではこれまで数点の歯や断片的な骨が出土していたが、今回の発見は、長らく学界に議論を呼んできた“古人類の存在”を確固たるものにする歴史的成果である。

発見は午前中、発掘作業が最も深い第1地点で行われていた際のことだった。裴氏が石灰層の間に黒く光る骨片を確認し、慎重に周囲を除去したところ、額から後頭部まで連なる形のよい頭蓋骨が姿を現した。現場に居合わせた助手の一人は「土の中から人の顔がのぞいたかのようで、全員が息をのんだ」とその瞬間を語った。

今回の化石は、歯や下顎、頭頂部の形状から、直立歩行を行った初期の人類に属するとみられ、周口店でこれまでに見つかっていた断片的資料の“実体”を示すものとして大きな意味を持つ。研究陣は「脳容量の測定や骨の特徴を調べることで、人類進化の系統をより詳しく明らかにできる」と期待を寄せている。

周口店遺跡では、1920年代半ばより国際的な研究チームによる調査が続けられており、化石燃料の採掘中に偶然見つかった骨片が“原人の痕跡ではないか”として注目されていた。しかし、完全な形の頭蓋骨が確認されたのは今回が初めてであり、人類史の大きな空白を埋める発見として世界中の研究者からの問い合わせがすでに殺到している。

北平市内では夕方の新聞号外が飛び交い、街角の売り場には化石の描画を掲げた紙面を手に取る市民の姿が見られた。読書会の教師は「古代の人間が実際にここで生きていたのかと思うと胸が躍る」と興奮気味に語った。

裴氏は「この遺跡にはさらに多くの史料が眠っているはずだ。慎重に調査を進め、人類の過去を一歩ずつ明らかにしたい」と述べ、今後の発掘継続を宣言した。

本日の頭蓋骨発見により、周口店は世界の古人類学研究の中心地としての重要性を一層高めることになるだろう。

— RekisyNews 科学面 【1929年】

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