【江戸 11月29日】
俳諧の大家として知られる松尾芭蕉(号:桃青)が本日、亡き父の三十三回忌を営むため、故郷である伊勢国上野(現在の伊賀上野)に向け、江戸深川の草庵を出立した。
門弟や関係者が多数見送る中、芭蕉師は旅立ちの句を読み上げ、深い感慨を胸に秘めて旅路についた。今回の旅は、単に亡父を弔うという私的な目的だけでなく、道中の各地で俳句を通じた交流を図り、さらなる「蕉風」の普及と完成を目指す公的な意味合いも持つと見られている。
芭蕉師は近年、この深川に構えた庵を中心に、その革新的な俳風を確立してきた。彼の弟子には、宝井其角、服部嵐雪など、既に独自の才能を開花させた者がおり、彼らの活動によって蕉風は現在、俳壇の主流を占めつつある。しかし師自身は、その地位に安住することなく、「風雅の誠」を探求し続けることを表明してきた。
今回の旅は、約九年前に深川に居を移して以来、最大の規模になると予想されている。師は、旧友を訪ね、各地の自然や歴史を肌で感じ取ることで、新たな詩想を得ることを目的としているという。
同行する者は最小限に留め、身軽な装いでの出立となった。この旅の成果が、今後の俳諧界にどのような新たな風をもたらすのか、文人墨客たちの間で早くも大きな期待が寄せられている。
— RekisyNews 文化面 【1687年】
