【東京 11月24日】
本日、連合国軍総司令部(GHQ)により、理化学研究所仁科研究室をはじめとする国内のサイクロトロン装置が破壊処分され、東京湾に沈められた。GHQ側は「軍事転用の恐れがある」として実行したと説明しており、終戦後の日本における科学研究のあり方に大きな衝撃を与えている。
対象となったのは、東京・本駒込の理化学研究所(通称・理研)に設置されていた仁科芳雄博士の研究室のサイクロトロン(円形加速器)、および東京大学理学部や京都帝国大学に設置されていた類似装置数基。米国側は「原爆研究施設の一環である可能性がある」との判断を下し、破壊命令を発出したとみられる。
仁科研究室の装置は、日本における原子物理学の草創期を支えた存在であり、1930年代から主に放射線医学や物理学の基礎研究に活用されていた。しかし、戦時中に軍との関係が生じたことで、終戦後GHQの調査対象となっていた。
破壊はGHQ工兵隊によって行われ、サイクロトロン本体は切断・解体されたのちトラックで運搬され、東京湾の海中へ投棄された。現場では多くの研究者が立ち会い、「学術の成果がこのような形で葬られるのは無念」と声を落とす者もいた。
一連の処分により、日本国内における大型原子物理装置は事実上消滅した。今後の科学研究や国際的信頼の回復に向け、日本の学術界は新たな出発を迫られている。
— RekisyNews 科学面 【1945年】
