東京市、労働者のための紹介所を設置

【東京 11月15日】

本日、東京市は芝区および浅草区の二か所に、労働者と事業主を仲介するための職業紹介所を開設した。政府・自治体による公共の職業紹介はこれが日本で初めての試みであり、失業や労働の不安定化が問題となる中で、雇用の調整を担う新たな制度として注目を集めている。

この事業は、従来の私設職業斡旋所や人夫請負業者による仲介の弊害を是正する目的で企画されたものだ。東京市当局は、労働者から紹介手数料を徴収せず、職種・賃金などの情報を公開して公正な取引を行う方針を示した。芝の紹介所は主に港湾・建設労働者、浅草の紹介所は職工や女工など市内の軽工業労働者を対象とするという。

市の説明によれば、利用者の登録制を導入し、求人側・求職側双方の実情を記録に残す仕組みを備える。これにより、労働市場の実態把握とともに、将来的には他都市への拡充も視野に入れている。市民からは「安心して仕事を探せる時代になる」との声も聞かれる一方、民間斡旋業者の一部には反発の動きも出ている。

東京市は「労働者の生活を安定させ、雇用の橋渡しを公の責任で行う」と声明。近代都市行政の新たな一歩として、今後の運用に注目が集まっている。

— RekisyNews 社会面 【1911年】

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