火星に初の人工衛星誕生──マリナー9号、赤い惑星を周回開始

マリナー9号の打ち上げ

【パサデナ 11月14日】

米航空宇宙局(NASA)が打ち上げた無人探査機「マリナー9号」が本日、火星の周回軌道に無事到達し、地球以外の惑星を回る初の人工衛星となった。これは人類の惑星探査史において画期的な一歩であり、火星の詳細な観測と将来の探査に向けた基盤が築かれた形だ。

マリナー9号は今年5月30日にケープ・カナベラルから打ち上げられ、約半年間かけて4億キロを超える宇宙の旅を終え、火星の重力圏に突入。軌道投入マヌーバも正確に実行され、高度約1,500キロの楕円軌道で火星を回り始めた。

この探査機は、火星の全表面を観測するためのカメラや赤外線・紫外線装置を搭載しており、火山、渓谷、砂嵐、極冠といった地形や気象のデータを今後数ヶ月にわたって地球へ送信する予定である。

現在、火星上空は激しい砂嵐に覆われており、初期の画像では視界がほとんど遮られている状況だが、NASAの科学者たちは、嵐の収束とともに表面の地形や古代の河川跡、クレーター構造などが明らかになることに期待を寄せている。

アポロ計画で月への道を切り拓いたアメリカが、今度は火星の周回探査に成功したことで、惑星探査の舞台はさらに深宇宙へと広がりを見せている。マリナー9号の任務は、火星の謎を解き明かす先駆けとして今後の有人探査の礎となるだろう。

— RekisyNews 科学面 【1971年】

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