羽田発の日航機、離陸直後に乗っ取り──単独犯が操縦席に乱入、全員無事

【東京 11月6日】

本日午前7時前、羽田空港を離陸した福岡行き日本航空351便(ボーイング727型機)が、上昇中に男1人によりハイジャックされる事件が発生した。乗員乗客161人を乗せた機体は一時騒然となったが、機長の冷静な対応により羽田空港へ引き返し、乗客全員が無事解放された。

警視庁航空警察隊によると、犯人は川上宗薫(かわかみ・むねよし、28歳)。乗務員に刃物を突きつけ、「キューバへ行け」と要求したが、燃料不足を理由に機長が説得を続け、羽田への帰還を装って着陸に成功。空港で警察が機内に突入し、男をその場で逮捕した。

事件当時、男はスーツ姿で一般乗客として搭乗。離陸直後に席を立ち、刃物を手に操縦室へ侵入した。乗客の多くは恐怖の中で座席に伏せるよう指示され、客室乗務員が冷静に対応したという。機内では流血や大きな混乱は起きず、乗客の1人は「静かなまま着陸できたのが奇跡のようだ」と語った。

警察の取り調べに対し、川上容疑者は「政治的な意図はなく、海外へ逃亡したかった」と供述。捜査当局は、精神的な動機を含めて慎重に調べを進めている。

戦後日本でのハイジャック事件は極めてまれであり、航空当局は「乗客の安全確保のため、今後は機内の警備強化を検討する」とコメントした。羽田空港は一時閉鎖されたが、午後には運航を再開している。

— RekisyNews 社会面 【1972年】

アイキャッチ画像 Jon Proctor – Gallery page https://www.jetphotos.com/photo/6839064Photo https://cdn.jetphotos.com/full/1/94799_1272566435.jpg, GFDL 1.2, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=31458604による

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次