【アルジェリア・コンスタンティーヌ 11月6日】
アルジェリア駐在のフランス陸軍軍医、シャルル・ルイ・アルフォンス・ラヴラン氏が、マラリア患者の血液を観察中に、従来知られていなかった微小な寄生生物を確認した。これは、長らく「沼地から立ち上る悪い空気」が原因とされてきた熱病の正体に、新たな光を投じる発見として注目されている。
ラヴラン氏は当地の軍病院にて、発熱と倦怠を訴える兵士の血液を顕微鏡で観察。赤血球の内部に暗色の粒子を持つ球状体、さらにその外に鞭毛のような構造が伸び、自ら動く様子を確認したという。氏はこれを「生きた有機体」すなわち原虫と断定し、熱病患者に特有の存在であることを確認した。
これまでマラリアは、湿地や瘴気を吸い込むことで起こるとされていたが、今回の発見により、病の原因が外気ではなく血液内に潜む生物である可能性が浮上した。医学界では「細菌説」や「瘴気説」を唱える学者も多く、賛否が分かれているが、現地の医師たちはこの観察結果を重視し、今後さらに確認を進める構えだ。
軍関係者によれば、同地域では近年も熱病による死者が後を絶たず、治療法は確立していない。今回の発見が、病の根本的な理解と治療法の糸口になるのではないかと、医療関係者の期待が高まっている。
ラヴラン氏は「観察された寄生生物こそがマラリアの直接の原因である」との見解を示し、今後さらに多数の患者の血液を調べる意向を明らかにした。顕微鏡の下でわずかに蠢く原虫の姿が、長年の謎を解く鍵となるかもしれない。
— RekisyNews 医学面 【1880年】
