全米大学ネットワークに前例なき障害 若手プログラマーがワーム放流か

【ニューヨーク 11月2日】

本日未明、アメリカ国内の大学や研究機関を中心としたコンピュータネットワーク「ARPANET」および関連のUNIX系システムにおいて、前例のない大規模な障害が発生した。

関係者によれば、この障害は自己複製型プログラム(ワーム)によって引き起こされたと見られ、複数の大学ではシステムが完全に停止状態に陥った。

原因となったプログラムは、コーネル大学大学院生ロバート・T・モリス(23)によって書かれたもので、UNIXの既知の脆弱性を突いて侵入・複製を繰り返し、瞬く間に全米5000台以上のマシンに感染したと推定されている。

モリス氏は「影響範囲の測定を目的とした実験だった」と釈明しているが、感染規模は本人の想定を大きく超え、事実上のサイバー攻撃として各機関に深刻な混乱をもたらした。

今回の“Morrisワーム”と呼ばれる現象は、プログラムがメール送信機能、rshコマンド、sendmailの脆弱性など複数の経路を用いて拡散したことが判明。感染速度が速すぎたため、ネットワーク負荷が爆発的に増加し、多くのホストが動作不能に。

米国防高等研究計画局(DARPA)は「情報ネットワークの安全性に根本的な課題がある」とし、今後の対策の必要性を強調。米国初の大規模インターネットセキュリティ事件として、専門家からは「新時代の情報災害」との警鐘も鳴らされている。

ロバート・モリス氏は、事件の責任について司法当局の捜査を受ける見通し。

今後、ソフトウェアの設計責任とネットワークの倫理的利用が問われることになりそうだ。

— RekisyNews 科学技術面 【1988年】

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