【東京 10月25日】
明治政府が国民統合の象徴として制定を進めている「君が代」について、本日、ドイツ人音楽教師フランツ・エッケルト氏による洋楽編曲が完成し、初の試演が東京音楽学校(仮)で行われた。日本古来の旋律に西洋音楽の和声を取り入れたこの試みは、明治国家の近代化政策を象徴する音楽的成果として注目されている。
「君が代」は、和歌の形式を持つ短い歌詞を有し、これまでにも和楽器による演奏や声楽による試作がなされていたが、今日の演奏は金管・木管・弦楽器などを加えた本格的な吹奏楽形式で行われ、列席した文部省関係者や軍楽隊員らから感嘆の声が上がった。
編曲を担当したエッケルト氏は、旧プロイセン軍楽隊出身で、来日以来、日本の音楽教育に尽力している。氏は「日本の旋律美を損なうことなく、洋楽の構造と融合させることに心を砕いた」と語った。
本日の試演を受け、「君が代」は今後、国家的儀礼や祝典における公式演奏曲として採用される見込みであり、日本人にとって“国の歌”としての位置づけが一層強まるものとみられる。
国家の威信を内外に示す象徴としての音楽表現が、ついに形をなした。文明開化の波が押し寄せる中、「君が代」がいかなる定着を見せるのか、その行方が注目される。
— RekisyNews 文化面 【1880年】
