【ワシントン 10月20日】
本日深夜、リチャード・ニクソン米大統領は、ウォーターゲート事件を捜査中の特別検察官アーチボルド・コックス氏を突如として解任した。これにより、司法省内で複数の高官が抗議辞任する異常事態となり、政権の混乱が一気に表面化している。
ホワイトハウスによれば、コックス氏がニクソン大統領の録音テープ提出命令に従わなかったことが、解任の直接の理由とされている。これに先立ち、大統領はコックス氏に対し、「要約文のみの提出」という妥協案を提示したが、同氏は「国民の知る権利を損なう」として拒否していた。
大統領の命令を最初に受けた司法長官エリオット・リチャードソン氏は、命令を拒否して辞任。さらに後任の副長官ウィリアム・ラックルスハウス氏も同様に辞任し、最終的にロバート・ボーク訟務長官代行が命令を遂行した。この一連の動きは、政界や世論から「土曜日の夜の虐殺(Saturday Night Massacre)」と称され、権力乱用への懸念が一層高まっている。
議会内では、大統領の行動が三権分立を損なう重大な事態であるとして、弾劾手続きの本格的な議論も視野に入りつつある。市民団体や報道機関も一斉に反発しており、ホワイトハウス前ではすでに抗議集会が始まっている。
ウォーターゲート事件は収束どころか、新たな局面へと突入した形となり、ニクソン政権の先行きに暗雲が立ち込めている。
— RekisyNews 国際面 【1973年】