【ベルリン 10月19日】
本日、ドイツ帝国議会は「社会主義者鎮圧法(Sozialistengesetz)」を正式に可決し、同日中にヴィルヘルム1世皇帝の署名により公布された。この法律により、社会主義者や労働運動家による政治的な結社、出版、集会などが大幅に制限されることとなり、国内の自由主義勢力や労働者層に大きな波紋を広げている。
この法案は、ビスマルク首相が強く推進していたもので、今年5月と6月に相次いで発生した皇帝暗殺未遂事件が引き金となった。いずれも社会主義者との関連が疑われたことから、政権はこれを「国内治安を脅かす革命思想」と位置付け、法制化を急いだ。
本法律により、「社会民主主義的傾向を有する団体や出版物」は禁止対象となり、必要に応じて警察当局が捜索、押収、解散を行う権限を持つ。また、特定の都市や地域における社会主義者の追放も可能となり、事実上の言論・結社の自由の大幅な制限が制度化された格好だ。
議会では、保守系議員が「国家と君主制を守るための必要な防衛策」として支持する一方、自由主義派や一部の中道議員からは、「憲法に保障された自由を侵害する暴挙」として強く反発する声もあがった。
なお、本法は時限立法として制定され、まずは2年間の適用期間が設けられるが、情勢次第では延長の可能性も示唆されている。
政権の狙いとしては、労働運動を封じ込める一方で、国民皆保険などの社会立法を推進し、労働者層の支持を取り込む戦略があるとみられるが、弾圧と懐柔の並行政策が功を奏するかは不透明だ。
— RekisyNews 政治面 【1878年】