ナポレオン軍、モスクワから撤退を開始──寒波と飢えに苦しむ退路

【モスクワ郊外 10月19日】

本日、ナポレオン・ボナパルト率いるフランス大陸軍が、占領していたモスクワからの撤退を正式に開始した。ロシア遠征開始から約5か月。大軍を擁して進軍したグランド・アルメ(大陸軍)は、首都占領の成果を得られぬまま、厳しい寒さと補給難の中で帰還の道を選ばざるを得なくなった

ナポレオン軍は6月末にロシアへ侵攻、8月のスモレンスク戦、9月のボロジノの激戦を経て9月中旬にモスクワに入城した。しかし、ロシア側は徹底した焦土戦術を採用。市街の大部分は火災で焼失し、物資や避難民の姿も消えた無人の都市が残されていた

その後1か月にわたりモスクワに滞在したものの、ロシア軍は戦闘を避けて後退し、講和交渉も実現せず、ナポレオンはついに撤退を決断。本日、約10万人余りの兵士とともに退路に就いたが、気温の急激な低下と食料の枯渇により、すでに兵の多くが衰弱している

撤退路となるスモレンスク街道には、すでにロシア軍の追撃部隊やコサック兵が待ち伏せしているとの情報もあり、今後の行軍は一層困難を極めると見られる。

ロシア側は、「侵略者はついに罰を受けることとなるだろう」として、ナポレオン軍の撃滅を狙う構えを見せており、フランス軍の生還は予断を許さない状況である。

一方、ヨーロッパ諸国の宮廷では、ナポレオンの戦略的失策が次なる政変の引き金となる可能性に注目が集まっている。このロシア撤退は、ナポレオン帝国の命運を大きく左右する一歩となるかもしれない。

— RekisyNews 国際面 【1812年】

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