【東京 10月18日】
本日午後、東京・麹町区内幸町の外務省庁舎前にて、外務大臣・大隈重信伯が来島恒喜(くるしま つねき)と名乗る男に手投げ弾を投げつけられるという衝撃的な事件が発生した。爆発により大隈伯は右脚を膝下から切断する重傷を負い、ただちに治療のため移送された。犯人の来島は、その場で短刀により自害し、死亡が確認された。
事件発生は午後2時過ぎ。外務省を出て馬車に乗り込もうとした大隈伯に向かって、来島は懐から取り出した爆裂弾を投擲。爆音とともに煙が立ち込め、周囲は騒然となった。大隈伯は右脚に直撃を受け、その場に倒れ込んだ。
加害者の来島は、福岡出身の政治活動家であり、旧玄洋社に関係していたとされる。現場に遺された遺書には、「政府が外国人を司法官に任用することは国辱にあたる」との強い抗議の言葉が記されていた。
この事件は、政府が進める外国人司法官の登用政策、すなわち条約改正に伴う外国人の司法参与を巡って、国内の一部から強い反発が出ていた最中に起こった。とりわけ、国権主義を掲げる一派からは「国家の独立を損なう行為」として激しい非難が寄せられていた。
重傷を負った大隈伯は意識はあるものの、状態は予断を許さないとされる。政府は緊急に関係閣僚会議を開き、国内の治安維持と動揺する世論への対応に追われている。
一人の政治家の命を狙った凶行は、今後の条約改正議論、そして国の進むべき方向に大きな影響を与えることが避けられない。
— RekisyNews 社会面 【1889年】