【パリ 10月13日】
本日未明、フランス王フィリップ4世の命令により、国内のテンプル騎士団員が一斉に逮捕された。逮捕者は団長ジャック・ド・モレーを含む百数十名に上り、国王直属の兵がフランス各地のテンプル修道院や拠点を包囲し、無抵抗のまま拘束されたという。
国王勅令には、騎士団が「異端」「貪欲」「不道徳な儀式」を行っていたとする複数の罪状が列挙されており、すでに教会法廷および王室の尋問官による取り調べが開始されている。情報筋によれば、一部の団員は“異端的な入団儀式”や“偶像崇拝”を認めたとの証言も出ている。
テンプル騎士団は、十字軍遠征の時代より聖地防衛と巡礼者の保護を任務とし、教皇の承認を受けて国際的に活動してきた軍事修道会である。膨大な寄進と金融活動により巨万の富を蓄え、ヨーロッパ諸国の王侯貴族にも貸し付けを行っていた。その独立性と経済力がかねてより王権と摩擦を生んでいたとも言われている。
今回の一斉逮捕は、長らく王国に根を張ってきた騎士団に対し、フィリップ4世が直接的な統制を打ち出した最初の大規模行動と見られる。王宮筋は「国王陛下は聖職者としての名目を悪用し、民衆を欺く不正を正そうとしておられる」とコメントしたが、政治的・財政的な動機を指摘する声も後を絶たない。
さらに王室は、団の所有する土地・城・財宝を今後すべて国庫に組み入れる方針であるとされ、民衆の間では“異端狩りの名を借りた財産没収ではないか”とのささやきも広がっている。
今後、拘束された団員には異端審問が実施される見通しであり、有罪となれば死刑も免れない。中世最大の武力修道会の行く末は、教皇庁の対応と国内の裁定に委ねられることとなる。
— RekisyNews 社会面 【1307年】