【ナフプリオン 10月9日】
本朝、ギリシャ共和国の初代大統領であるイオアニス・カポディストリアス氏が、ナフプリオンの聖スピリドン教会前にて暗殺される事件が発生した。 犯行は同国の名門マンゾニス家の一員によるものとされ、容疑者の一人はその場で射殺され、もう一人は市民により拘束された。
カポディストリアス氏は、オスマン帝国からの独立を果たしたばかりの新生ギリシャ国家の舵取り役として1828年に就任。 かつてロシア帝国外務大臣も務めた経歴を持ち、欧州列強の支持のもとギリシャの行政・教育制度の近代化に努めてきた。
しかしその一方で、中央集権的な統治手法や有力貴族層の権限抑制により、国内では強い反発も巻き起こっていた。 特にペロポネソス半島南部の有力氏族との対立は深まりを見せており、今回の暗殺もそうした背景から発生したものと見られている。
目撃者の証言によれば、大統領は教会へ向かう途中、突如として至近距離から銃撃を受け、即死。 護衛が犯人の一人を即座に射殺したものの、現場は騒然となり、政府関係者の多くが一時避難する事態となった。
事件を受け、臨時政権は治安維持と国家安定を最優先とする声明を発表。ギリシャ国内では新たな内戦への懸念が高まりつつあり、欧州各国も情勢を注視している。
建国わずか数年にして、国家の象徴的人物を失ったギリシャは、いま岐路に立たされている。
— RekisyNews 国際面 【1831年】
