【エルサレム 10月2日】
本日、キリスト教徒の支配下にあったエルサレムが、アイユーブ朝の君主サラーフッディーン殿下に対し、正式に降伏した。これにより、約88年にわたる十字軍国家エルサレム王国の都は、再びイスラーム勢力の手に渡ることとなった。
長く続いた攻囲戦の末、城内の食糧は枯渇し、守備軍の戦意も著しく低下していた。最後まで籠城を指揮していたバリアン・オブ・イベリン卿は、和平交渉の末に降伏を受け入れ、一定の条件下で市内の民間人の命が保障されたと伝えられる。
サラーフッディーン殿下は、前回の十字軍による占領時に起きた大虐殺を繰り返すことを避け、捕虜の身代金支払いや特定の層への恩赦を認めるなど、寛容な対応を見せた。市民の中には金銭を支払って退去する者もおり、イスラム軍は秩序だった統治を開始しつつある。
市内の聖堂や聖地に関しても、サラーフッディーン側は一定の保全措置を講じる意向を示しており、聖墳墓教会は引き続きキリスト教徒の管理下に置かれる見通しだ。
この歴史的な開城は、第三回十字軍の呼び水になる可能性も高く、今後の動向が欧州各国に大きな衝撃を与えることは必至である。
— RekisyNews 国際面 【1187年】