【ワシントンD.C. 9月21日】
21日朝、アメリカの首都ワシントンD.C.で大規模な自動車爆発事件が発生し、チリの元外相オルランド・レテリエル氏(44)が死亡した。現場は大使館や各国研究機関が並ぶシェラトン・サークル付近で、同氏の乗る車両が突然爆発。乗っていた助手のアメリカ人女性ロニー・カーモラン氏(25)も重体の末、後に死亡が確認された。
レテリエル氏は、1973年の軍事政権樹立以前にサルバドール・アジェンデ政権下で外相や駐米大使を歴任。軍のクーデター後に国外へ脱出し、現在は米国内で反軍政活動を続けていた人物である。今回の爆殺事件について、米連邦捜査局(FBI)や首都警察は「政治的動機に基づいた国外勢力による犯行の可能性がある」として、捜査を本格化させた。
爆発は午前9時30分ごろに発生。近隣住民や通行人が「雷鳴のような衝撃音と黒煙を目撃した」と証言しており、車両の下部に仕掛けられた高性能爆弾が遠隔操作で起爆された可能性も指摘されている。
米国務省は本件に関して「米国の領土内で政治的暗殺が行われた事実は重大であり、徹底的な真相解明が求められる」とする声明を発表。外交ルートを通じ、チリ政府にも情報提供を要請したという。
首都ワシントンの研究機関や人権団体、在米チリ人社会では動揺が広がっており、事件現場には花束が手向けられ始めている。ある亡命チリ人は「この地にまで国家の恐怖が追ってくるとは」と声を震わせた。
今後の捜査結果と米・チリ関係への影響が注目される。
— RekisyNews 国際面 【1976年】