東ドイツ市民、自由への越境始まる — ハンガリー、オーストリア国境を開放

【ブダペスト 9月11日】

ハンガリー政府は11日午前0時をもって、国内に滞在していた東ドイツ(ドイツ民主共和国)市民に対し、西側諸国への出国を正式に許可し、オーストリアとの国境を開放した。これにより、「鉄のカーテン」とも呼ばれた東西冷戦時代の象徴が事実上機能を失い、冷戦構造に大きな亀裂が生じ始めた。

ハンガリーにはこれまで、観光名目で入国した多数の東ドイツ国民が滞在しており、西側への脱出を希望する者も少なくなかった。特に8月に行われた「汎ヨーロッパ・ピクニック」では、象徴的に国境の一部が一時開放され、多数の東ドイツ市民がオーストリアへ越境。この動きが国際社会の注目を集め、ハンガリー政府内でも方針転換への議論が高まっていた。

今回の措置により、数千人規模の東ドイツ市民が一斉に西側へと移動を開始。国境地帯では多くの人々が家族と再会し、涙を流す姿も見られた。現場では「自由だ!」「やっと夢がかなった!」と叫ぶ人々の声が響き渡っている。

東ドイツ政府はこれに強く反発し、「ハンガリーによる国家主権の侵害」と非難したが、国際世論は概ねハンガリーの人道的対応を支持している。西ドイツのコール首相も「歴史的な日だ」と述べ、歓迎の意を示した。

この決断は、東欧諸国における民主化のうねりを加速させ、ベルリンの壁崩壊、さらには東西ドイツ統一への道を切り開く大きな転換点となる可能性が高い。

— RekisyNews 国際面 【1989年】

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