【平城京 9月7日】
本日、藤原不比等の娘・光明子(こうみょうし/光明皇后)が、天平の都・平城京において聖武天皇の皇后に冊立された。これは日本の歴史上初めて、皇族の出自ではない女性が皇后となるという画期的な出来事であり、朝廷内外に大きな波紋を呼んでいる。
光明子は、かつて右大臣まで上り詰めた藤原不比等の四女で、聖武天皇との結婚により妃(后妃)となっていたが、このたび正式に「皇后」の地位を授けられた。これにより、皇族以外の女性にも皇后となる門戸が開かれたことになる。
朝廷では、これまで皇后は天皇家の血筋に限るという不文律が長く続いており、これを破る今回の冊立には、藤原氏の強い政治的影響力が背景にあると見られている。特に光明子の母・県犬養三千代は、かつて元明天皇に仕えた女官であり、皇室との結びつきも深かった。
聖武天皇は、父・文武天皇の血を引き、即位後は仏教を重んじる施政を続けているが、今回の光明子の皇后昇格によって、藤原氏と皇室の結びつきがさらに強化される形となった。藤原不比等の死後も、藤原四兄弟らが政界の要職を占めており、藤原氏政権の確立に向けた重要な一歩と評価される。
光明子は文化的教養にも優れ、後年には東大寺や施薬院の設立、貧民救済などの慈善活動を主導するなど、仏教と福祉の象徴として名を残すこととなる。今日の冊立は、単なる制度上の転換にとどまらず、女性の地位や政治的参与にも新たな地平を切り拓く契機として注目されている。
— RekisyNews 宮廷面 【729年】