ソ連、バルト三国の独立を承認 歴史的転換点に

【モスクワ 9月6日】

 ソビエト連邦最高会議は本日、エストニア・ラトビア・リトアニアの独立を正式に承認した。これにより、バルト三国は長年の悲願を達成し、独立国家として国際社会へ再び歩み出すこととなった。ソ連が自らの構成共和国の独立を認めるのは極めて異例であり、帝国的支配構造の終焉を告げる重大な決定といえる。

バルト三国は1940年、独ソ不可侵条約の秘密議定書に基づきソ連に併合されたが、住民は常に独立回復を望み続けてきた。1980年代後半のペレストロイカを契機に民族運動が高まり、1989年には「バルトの道」と呼ばれる人間の鎖で独立を訴えるなど、非暴力の抗議活動が国際的な注目を集めていた。

今年1月にはリトアニアやラトビアでソ連軍による流血事件が発生し、緊張が高まったが、先月のモスクワでの保守派クーデター未遂を経て、民主化を求める潮流が一気に強まった。今回の承認は、その余波を背景に実現したものである。

リトアニアのランズベルギス最高会議議長は「歴史的不正がついに正された」と声明。ラトビアやエストニアの指導者も国際社会への復帰を強調し、西欧諸国からは歓迎の声が相次いでいる。

一方、モスクワの政界では「連邦解体の連鎖が加速する」との懸念が根強く、ソ連そのものの存続に疑問符が付けられている。ゴルバチョフ大統領は「自主決定を尊重する」と述べたが、権限は急速に弱まりつつある。

バルトの海辺に響く鐘の音は、独立の喜びとともにソ連崩壊の足音をも告げている。

— RekisyNews 国際面 【1991年】

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