【ローマ 9月3日】
本日、ローマ司教座は新たな指導者としてグレゴリウス1世を教皇に選出し、第64代ローマ教皇が正式に即位した。激動の世紀において、霊的・政治的両面での強い指導力が求められる中、民衆と聖職者から厚い信頼を受ける人物の就任に、広く安堵と期待の声が上がっている。
グレゴリウス1世(本名グレゴリウス・マグヌス)は、元ローマ市長を父に持つ名門の出身で、聖職者としての修養と行政官としての才覚を兼ね備えた人物。かつてコンスタンティノープルに教皇使節として赴任し、東方との交渉にも通じている。修道士としての隠遁生活を経て、慎み深さと深い信仰心でも知られ、ローマの民衆からの支持も厚い。
今回の教皇選出は、前教皇ペラギウス2世の崩御に伴い行われた。大地震や洪水、疫病、さらにランゴバルド族の脅威に晒される西方世界において、教皇の存在は単なる宗教指導者に留まらず、社会秩序と人心の要となっている。
就任にあたってグレゴリウス1世は、「司牧の使命に身を捧げ、貧しき者の声を聞き、すべての人に神の慈しみを届けたい」と語った。また、教会の権威を強化するとともに、弱者の保護とローマ市の再建に注力する意向を示している。
なお、グレゴリウス1世の名は、既に彼の名を冠した「グレゴリオ聖歌」などの典礼改革の先駆けとしても知られており、今後の教会文化と信仰生活の指針を定める存在として注目されている。
動乱の時代において、いかに教会が信仰と秩序の砦として機能しうるか──。その答えが、グレゴリウス1世の歩みに託されることとなる。
— RekisyNews 宗教・欧州面 【590年】