【アレクサンドリア 9月2日】
エジプト女王クレオパトラ7世(27)は本日、王都アレクサンドリアで大規模な式典を行い、自身の息子であるプトレマイオス15世フィロパトル・フィロメトル・カエサル、通称「カエサリオン」(3)をプトレマイオス朝の共同統治者とすることを正式に宣言した。
カエサリオンは、共和政ローマの実力者であったガイウス・ユリウス・カエサルとの間に生まれたとされる王子で、クレオパトラは彼を「偉大なるカエサルの正統なる後継者」と称えた。宣言に際し女王は、「エジプトの未来を守るため、血統と正統性を示す必要がある」と強調。式典では大司祭や王族らが列席し、アレクサンドリア市民に向け盛大な祝賀行進も行われた。
しかし、この決定はエジプト内外に大きな波紋を広げている。共和政ローマでは、3月に暗殺されたカエサルの後継者をめぐり、元腹心であるマルクス・アントニウスと、養子であるガイウス・オクタウィウス(後のアウグストゥス)らの対立が激化。エジプトが「カエサルの血」を継ぐ王子を前面に押し出したことは、ローマ政界の権力闘争に直接影響を及ぼす可能性が高い。
一方、ナイル流域の民衆の間では「エジプトに安定をもたらす吉兆」として歓迎の声が上がる一方で、「ローマを過度に刺激すれば再び戦火を招く」との懸念も根強い。ある神官は本紙に対し、「これはローマとの微妙な駆け引きだ。カエサリオンの名は盾であり、同時に刃でもある」と語った。
専門家の間では、今回の共同統治宣言は、プトレマイオス王朝の独立維持と正統性確保を狙った大胆な一手とみられるが、クレオパトラの賭けはローマとの関係悪化を招きかねない。今後、エジプトとローマの権力関係は一層複雑さを増す見通しだ。
— RekisyNews 国際・古代地中海面 【紀元前44年】