米ソ間に「ホットライン」開設 首脳直接通信で誤算回避へ

【ワシントン・モスクワ 8月30日】

米国政府とソビエト連邦政府は本日、ホワイトハウスとクレムリンを直結する緊急通信回線、いわゆる「モスクワ=ワシントン・ホットライン」を正式に開設した。両国首脳間の直接通信を可能にするもので、昨年のキューバ危機で高まった核戦争の危機を教訓とし、誤算による全面衝突を防ぐことが狙いだ。

ホットラインは大西洋海底ケーブルと短波無線を併用し、米首都ワシントンとソ連首都モスクワを結ぶ全長約6,500キロの回線で構成される。第一報は本日、ホワイトハウスからクレムリンにテスト信号として送信され、数分以内に返答が到達。両政府は回線の安定性を確認した。

ケネディ大統領は声明で「この回線は、疑念と恐怖ではなく対話によって平和を守るためのものだ」と強調。一方、ソ連のフルシチョフ首相も「誤解と衝突を避ける安全弁として活用したい」とコメントし、両国が一定の協調姿勢を示した。

この合意は、先月締結された部分的核実験停止条約(PTBT)に続く米ソ協調の一環とみられる。国際社会では、ホットライン開設を「冷戦下での危機管理体制強化」と評価する声が多いが、一部欧州諸国からは「米ソだけの直接交渉が進めば、同盟国が置き去りにされる」と懸念も出ている。

首脳間で言葉が交わされることはないものの、緊急時に文書を即座にやり取りできる体制は史上初。核の時代における「数分の判断」の重みを踏まえたものだ。

冷戦の緊張はまだ続いている。

だが、ホットラインを通じた一本の通信が、世界の運命を変える日が来るかもしれない。

— RekisyNews 国際・安全保障面 【1963年】

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