北条泰時、「御成敗式目」を公布 武家政の裁判基準を成文化

【鎌倉 8月27日】

本日、執権・北条泰時は武家政権の基本法「御成敗式目(貞永式目)」を公布した。条文は五十一か条。御家人同士の所領相論や境界争い、惣領・庶子の相続と後見、奉公違背、殺傷・放火・押領などの重罪、在庁官人・守護・地頭の職掌と越権の戒めまで、訴訟と行政の拠り所を明示する。判断は「古例」と「道理」に拠るべしとし、起請・神判よりも文書・証言・検使の結果を尊ぶ姿勢を明記した。

審理は問注所が中心となり、政所は所務・財務の執行、侍所は軍政・警察を担う。評定衆の合議を経て裁断を下す手順、召文・陳状・証文の様式、証文の真偽糺明、期日の厳守、連座の抑制、誣告の禁も定める。強訴・徒党の禁圧、年貢未進・輸送妨害の取締、検断の手続きまで条理を通した。荘園・公領の所務は本所・地頭の分掌を明確にし、守護の権限は「大事の検断」に限るとした。

公家法・寺社法の旧例は尊重しつつ、武家法の統一を優先する構えで、神社仏閣の不入・不輸の特権と治安維持の調和にも言及。女房・未成年の保護、寄進・売買・分割の制限、無主地の扱いなども条目に記された。式目は後日、先例の累積に応じて追加改補される見込みで、当面は「評定」への付議で運用の齟齬を正すという。

各国の守護・地頭・在庁官人には写しが下げ渡され、訴状様式の統一と判決の迅速化が図られる。御家人の間からは「所務が定まり安堵」との声、領民からも「押妨の歯止めに」と期待が上がる。臨時の沙汰から成文の基準へ――武家の政は“力の政治”から“法の政治”へと舵を切った。

— RekisyNews 政治・制度面 【1232年】

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