【ヴェルサイユ 8月26日】
本日、憲法制定を進める国民会議は「人および市民の権利の宣言」を可決した。ミラボーらの起草草案を基に修辞を整え、憲法の前文として位置づける。8月4日の特権廃止に続き、新国家の土台を内外に示す一歩である。
宣言は、人は生まれながらに自由かつ権利において平等であると掲げ、その自然権を「自由・所有権・安全・圧政への抵抗」と列挙。主権は国民(国家)に存し、法律は一般意思の表現であると定義した。身分や出自により法の前に差を設けてはならず、課税も能力に応じて等しく負担すべきだとする。
思想・良心・宗教の自由、言論・出版の自由を明記し、恣意的逮捕の禁止、罪刑法定主義、推定無罪、刑罰の必要最小限の原則を定めた。公務員は社会に対し説明責任を負い、行政の行為は法によってのみ拘束されるとするなど、統治の透明性も強調されている。
また、所有権は神聖不可侵犯であるが、明白な公共の必要と正当な補償の下でのみ収用し得ると規定。権力分立の理念を掲げつつ、王権と議会の関係や参政権の資格(財産要件)をめぐる論争はなお続く見通しだ。宣言の適用範囲、地方への布告方法、治安と自由の均衡など、運用上の課題も議場に残る。
街では刷り上がった文面が掲示板に貼られ、群衆が朗読に耳を傾けた。パンの不足と物価高が続く現実の中で、理想は試されることになる。とはいえ、今日の採択はフランスのみならず欧州各国の立法に長く影響するだろう。法の支配を宣言した紙片は、いま、憲法という器を待っている。
— RekisyNews 政治・制度面 【1789年】